2009年09月01日

第8話 ■灼熱の戦友■

 圧倒的に不利な状況である光景を目の前にしても、彬良は凛と立つ。
 ターン最初の処理時に引いた一枚のカードを手中に収めた。今度はその手で、DDの墓地ゾーンに手を伸ばす。

 反撃の狼煙を、上げる為に。


彬良 LP:8000 手札:6
<フィールド>
羊トークン×2(守備表示)、魔法都市 エンディミオン(魔力カウンター:9)、スピリットバリア、伏せカード×1


優衣 LP:1900 手札:4
<フィールド>
F・G・D、竜魔人 キングドラグーン、タイラント・ドラゴン、そよ風の竜(それぞれ攻撃表示)、伏せカード×1


スピリットバリア 永続罠
自分フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。


スケープ・ゴート 速効魔法
このカードを発動する場合、自分は発動ターン内に召喚・反転召喚・特殊召喚できない。自分フィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を4体守備表示で特殊召喚する。(生け贄召喚のための生け贄にはできない)


魔法都市エンディミオン フィールド魔法
自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。魔力カウンターが乗っているカードが破壊された場合、破壊されたカードに乗っていた魔力カウンターと同じ数の魔力カウンターをこのカードに置く。1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを取り除いて自分のカードの効果を発動する場合、代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを取り除く事ができる。このカードが破壊される場合、代わりにこのカードに乗っている魔力カウンターを1つ取り除く事ができる。


F・G・Dファイブ・ゴッド・ドラゴン
攻撃力:5000 守備力:5000 闇属性 ☆12
【ドラゴン族・融合/効果】
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。ドラゴン族モンスター5体を融合素材として融合召喚する。このカードは地・水・炎・風・闇属性のモンスターから戦闘ダメージを受けない。


竜魔人 キングドラグーン
攻撃力:2400 守備力:1100 闇属性 ☆7
【ドラゴン族・融合/効果】
「ロード・オブ・ドラゴン−ドラゴンの支配者−」+「神竜 ラグナロク」
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手はドラゴン族モンスターを魔法・罠・モンスターの効果の対象にする事はできない。1ターンに1度だけ、手札からドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。


タイラント・ドラゴン
攻撃力:2900 守備力:2000 炎属性 ☆8
【ドラゴン族・効果】
相手フィールド上にモンスターが存在する場合のみ、バトルフェイズ中にもう一度だけ攻撃をする事ができる。また、このカードを対象にする罠カードの効果を無効にし破壊する。他のカードの効果によってこのカードが墓地から特殊召喚される場合、自分のフィールド上ドラゴン族モンスター1体を生け贄に捧げなければならない。


そよ風の竜 オリカ
攻撃力:100 守備力:100 風属性 ☆2
【ドラゴン族・効果】
自分フィールド上に「そよ風の竜」以外のドラゴン族モンスターが表側表示で存在する場合、このカードを攻撃対象に選択する事はできない。このカードの召喚・反転召喚に成功した時、自分の墓地から攻撃力1500以下のチューナー以外のドラゴン族モンスター1体を自分のフィールド上に特殊召喚する事ができる。
制作協力:空様


現在、彬良のメインフェイズ1


「魔法都市の魔力カウンターを六つ取り除き、墓地より『神聖魔導王 エンディミオン』を攻撃表示で特殊召喚」
 現れたのは、このファンタジーな都市の支配者たる魔導王。あらゆる魔導に精通しており、自らが治める領域と民を守るため、彬良の元に君臨した。

神聖魔導王 エンディミオン 攻撃力:2700

「神聖魔導王 エンディミオン、宮木先輩の切り札ですね。ですが、それでは次の私のターン、ドラゴン達の攻撃で返り討ちにあいますよ」
「切り札、か」
 彬良は優衣の発言を適当に聞き流し、自分の元に居る魔導王へと視線を送った。 
 魔導王は自らの杖を天に掲げ、呪文を詠唱。彬良のDDの墓地ゾーンが光り出す。
「神聖魔導王 エンディミオンの効果により、墓地の『灼熱の試練』を手札に加える」
「灼熱の試練。……メタモルポット」
「正解。どの道このままじゃエンディミオンの破壊効果は使えないからな」
 魔導王を中心に、辺りが炎に包まれた。炎は敵のドラゴン達の前にも勢いよく燃え塞がり、視界を奪う。
「手札に加えた『灼熱の試練』を発動! フィールドのレベル七である神聖魔導王 エンディミオンをリリースし、手札の『伝説の爆炎使い(フレイム・ロード)』を儀式召喚する!」
 魔導王を包む炎が激しくなった。王の姿を隠し、更に天へと向かって燃え上がる。
「――来いッ!! 相棒(フレイム・ロード)!!」
 彬良の求める声で、酷く燃え盛っていた炎が突如一気に拡散、直ちに消滅。
 魔導王が君臨していた地に、今度は伝説とされている紅き眼と髪持った炎の青年魔導師が降り立った。

伝説の爆炎使い 攻撃力:2400

「フレイム・ロードの効果は、対象を取らないものだ。よって、ドラグーンの効果は無力。魔法都市エンディミオンの魔力カウンターを三つ取り除き、フレイム・ロードの効果、発動!」
 爆炎使いが杖を掲げると、先程と同じように辺り一面が火の海となった。それは激しく渦を巻き、およそフィールド全体を支配する。
「フィールド上のモンスターを全て破壊する」

 ――バーニング・サラマンダー!!

 渦巻く炎が隅から順に、彬良の盾となっていた羊達を、そよ風の竜を、タイラント・ドラゴンを、ドラグーンを、一瞬のうちに焼き尽した。
 炎は残るF・G・D包み込む。五つの口が、それぞれ咆哮を上げた。
「チェーンして、F・G・Dを対象に『神秘の中華鍋』を発動」
 F・G・Dに程良く火が通ったところで、優衣のたった一枚の伏せカードが翻える。竜の足元にこれまた巨大な中華鍋、お玉、調味料が出現した。鍋もまた炎を挙げ、ごま油や胡椒等の調味料たちが独りでに味付けをし、お玉が食材を支えて満遍なく加熱させ、調理していく。
 これほど奇妙な光景もまた珍しいものだな、と彬良は思った。
「神秘の中華鍋か、上手いものだな。おかげで君に出すメニューが少し豪華になりそうだ」
 調理器具が消え、今度は巨大な皿と見た目は野菜の無い中華料理の酢豚が現れる。料理が皿の上に落されると、息つく間もなく光の粒子となって優衣の体に吸収されていった。
「どういう意味ですか」
「それをこれから披露するんだよ。墓地のUFOタートル一体をゲームから除外し、『炎の精霊 イフリート』を。そして、『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』をそれぞれ攻撃表示で召喚」
 炎に包まれた岩石のような物体と精霊というよりは魔人と呼んだ方が良いような姿の真っ赤な体躯のモンスターが、伝説の爆炎使いを挟むようにして現れた。
 全員が攻撃態勢に入り、主の命令を待ちわびる。

炎の精霊 イフリート 攻撃力:1700
爆炎集合体 ガイヤ・ソウル 攻撃力:2000

「行くぞ。炎の精霊 イフリートでプレイヤーにダイレクトアタック! イフリートの効果により、このバトルフェイズの間このカードの攻撃力は300ポイントアップする」

炎の精霊イフリート 攻撃力:1700→2000

 どこからどう見ても精霊には見えないイフリートが、重々しい雄たけびを上げた。拳を握りしめ一気に天へと突き上げると、優衣の足もとから炎が噴き出す。
「続いて、爆炎集合体 ガイヤ・ソウルでダイレクトアタック!」
 ガイヤ・ソウルが、未だ炎の中に居る主の敵へと一直線に突っ込む。
「伝説の爆炎使い(フレイム・ロード)、止めだ!」
 イフリートの起こした炎が静まり、ガイヤ・ソウルが彬良のフィールドへ帰還する。
 爆炎使いが杖を構え、先端を優衣へ向けた。杖の先端に灯火が灯り、それは球に形を変えてぎゅっと圧縮される。
「私のライフは残り2900です。これでこのターン内で終わらせるだなんて正気ですか。どの道次の私のターンで手札にある『死者蘇生』を使えば――」
「正気だよ。フレイム・ロードを対象に、トラップカード、『守護霊のお守り』を発動! 墓地に存在するモンスターの数だけ、フレイムロードの攻撃力が100ポイントアップする」
 守護霊のお守りは、幼い頃誕生日にお守りとして光にプレゼントされたカードだった。貰ったその日から早速デッキに入れ、今まで一度たりとも抜くことは無かった。
 このお守りに、危うい状況を度々救われてきたことか。彬良にとっては今でも大切なお守りだった。
「私の墓地には、神聖魔導王 エンディミオン、ワタポン、メタモルポット、天下人 紫炎、リトル・キメラ、UFOタートル二枚、計七体のモンスター達が眠っている。よって、フレイムロードの攻撃力は800ポイントアップだ」
 彬良のDDの墓地ゾーンから七つの光の弾が現れ、爆炎使いの周りを囲んだ。

伝説の爆炎使い 攻撃力:2400→3100

 ――バンガルム・メティオ!!

 彬良の声と共に、爆炎使いはアイドリング中の片方の手を杖を握るもう片方の手に添える。杖の先にある小さい火の玉から、術者よりも一回りは大きいであろう炎の弾が勢いよく射出された。
 炎弾は敵めがけて一直線に突き進む。
 優衣は弾丸をまともに受け、暫くは炎の中に閉ざされた。


灼熱の試練 儀式魔法
「伝説の爆炎使い」の降臨に必要。フィールドか手札から、レベルが7以上になるようカードを生け贄に捧げなければならない。


伝説の爆炎使い(フレイム・ロード)
攻撃力:2400 守備力:2000 炎属性 ☆7
【魔法使い族・儀式/効果】
「灼熱の試練」により降臨。フィールドか手札から、レベルが7以上になるようカードを生け贄に捧げなければならない。自分または相手が魔法を発動する度に、このカードに魔力カウンターを1個乗せる。このカードの魔力カウンターを3個取り除く事で、このカードを除くフィールド上のモンスターを全て破壊する。


炎の精霊 イフリート
攻撃力:1700 守備力:1000 炎属性 ☆4
【炎族・効果】
このカードは通常召喚できない。自分の墓地の炎属性モンスター1体をゲームから除外して特殊召喚する。このモンスターは自分のバトルフェイズ中のみ、攻撃力が300ポイントアップする。


爆炎集合体 ガイヤ・ソウル
攻撃力:2000 守備力:0
【炎族・効果】
自分フィールド上の炎族モンスターを2体まで生け贄に捧げる事ができる。この効果で生け贄を捧げた場合、このモンスターの攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの数×1000ポイントアップする。このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その攻撃力が守備力を上回っていればその数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。バトルフェイズ後にこのカードを破壊する。


死者蘇生 通常魔法
自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。


守護霊のお守り 通常罠
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択する。選択したモンスター1体の攻撃力は、ターン終了時まで自分の墓地に存在するモンスター1体につき攻撃力が100ポイントアップする。


魔法都市エンディミオン 魔力カウンター:9→3→4→1

優衣 LP:1900→6900→0


 勝敗が決まって立体映像が消えた後、彬良はゆっくりと前へ歩を進める。
(これが南木の言っていた不吉な予兆か。今のは始まりにすぎないのだろうな)
 デュエルフィールドのど真ん中だった場所、デュエル中はバベル・タワーが経っていた地面の大穴を、軽い身のこなしで飛び越る。
 向かいに居た優衣はデュエルの後、突然倒れた。気を失ったのかどうかはまだ未確認な為不明だが、恐らくはかけられていた術が解けたのだろう。
(術の時間切れか)
 優衣のそばに詰め寄り、そっと抱き起こす。
 彬良はブレザーの胸ポケットから携帯電話を取り出すと、元来た道を振り返った。
(まずはこれを元に戻しておかないとな)
 視線の先には、つい今し方飛び越えた落とし穴とも見て取れる大穴があった。


「あーあ、貴重な媒体が。時間切れかぁ……もうちょっとあの女に真面目にかけておけばよかったなぁ」
 夕方なのに全ての窓にカーテンがしてある為に暗い和風の一室で、蝋燭の火を前に飛燕が呟いた。
「無理もないだろ。楓さんのことで気がおかしかったんだから」
「それに、そこまで遠くに行っていないと踏んで、ここの集落からは一番近い学校の亜桜高校付近で適当とは言え生徒十何人かに術をかけてきたのは正解だっただろ。学生の情報ネットワークって凄ぇからな」
 蝋燭を隔てて飛燕と向き合う二人の兄弟、七藤晴彦ななふじはるひこ七藤晴樹ななふじはるきがそれぞれ声を発した。
「しっかし、お前のこの術。ホントに便利だよなー。術をかけたやつの記憶が読めるだけじゃなくて、視界もこうしてモニターとして映し出せるし、操りたい時に操れるし。今度教えてくれよ」
 晴樹が飛燕に寄りかかって肩に腕を回す。
「別に良いけど、相当気力を使うから全てが終わってから教えてあげる」 
「そっか。お前の役に立てると思ったんだけどなぁ」
「いいよ、こうして一緒に居てくれるだけでも十分だから。おかげで僕達以外の一族の人間を皆殺しに出来たんだし」
 飛燕は首に掛けられた銀のペンダントを手に乗せる。
 姉の居場所は分かった。これで準備さえ整えば、いつでも迎えに行ける。
「ところで、今見たこの女がかの『剣舞姫』こと宮木彬良?」
 物思いにふけっているところに、晴彦の声が入って来た。飛燕は自分の肩に掛けられた晴樹の腕を押しのけ、寄りかかっている晴樹の体を起こす。
「んー。この媒体の記憶からして、ほぼ間違いないんじゃないかな? 流石に南木美乃里との活動についての情報は無かったけ――」
 「ど」、と良い終える前に、パチッと軽い音が響いて割り込む。部屋全体が今までとは見違える程に明るくなった。
「ったく、電気ぐらいつけなさいよ!」
「あっ! やめてっ! 茜、気持ち悪いっ! 消してくれぇ〜!」
 暗いところが大好きな飛燕にとっては、あまりの気持ち悪さに顔を両手で塞いで床を転げ回った。それを見て晴彦と晴樹兄弟が笑っているらしい。愉快な、飛燕にとっては不愉快な笑い声が聞こえてくる。
「このおよそ一週間、私と晴菜ちゃんがいない間に飛燕が暗いところが好きだからって、本当に蝋燭一本で過ごすだなんて信じられない! しかもカーテンまでしちゃって! そこのあんたたち兄弟も甘やかし過ぎ!」
「いや、別に俺達は暗くても問題ないし。な、兄貴」
「ああ、問題無いな。少しは暗視も鍛えられるんだ、寧ろ修行だと思えばって晴樹と話してたところだったんだよ。それにしても、よく本当にこの一週間を蝋燭一本で過ごしていたってことが分かったな」
「女の勘を甘く見ないで頂戴」
 だんだんと明りに目が慣れてきたが、それでも飛燕にとってはまだ気持ちが悪いものだった。
 顔を覆っている指の隙間から、部屋の入り口の方で仁王立ちをしている七藤茜ななふじあかねの姿を確認する。
「晃和神社の場所を突き止めて来たよ。意外と近かった」
 茜は、楓よりも短めの黒髪を僅かに靡かせながらこちらに歩み寄り、何とか起き上がった飛燕と目線を合わせる。
 集落から出たことのない飛燕達にとっては、同じ亜桜町内といえど少し出ただけで新鮮な気分になったものだ。
「ただ、中には入れなかったよ。強力な結界が施してあるみたい」
 茜が人差し指を蝋燭の火に向ける。
 火が一瞬だけ激しく燃え上り、跡形もなく消えた。
「丁度良かった。その晃和神社に姉さんがいるみたいなんだ。うー、気持ち悪っ」
 首に下げているペンダントをぎゅっと握りしめ、襲ってくる吐き気に耐える。晴樹が背中をさすってくれているおかげで、少しは楽になったた。
 呆れたような溜息が、目の前の茜から漏らされる。
「私達七藤一族の邪魔ができる存在と言えば、後で潰す予定だった晃和神社の巫女だけでしょ。もしかしたら飛燕ならあの結界を破れるかもしれないし、思ったより早く楓さんと残りの四神のカードが手に入りそうだね」
「そうだね。でも例え、その結界を僕が破れたとしても、立つのですら困難になる程の力を使うと思うよ。あくまで昔話を参考にしての話だけど」
「問題無いぜ。あとは俺達がやる。な、兄貴!」
「ああ。でも、そう簡単に倒せる相手ではなさそうだけどな」
 晴彦の一言で、茜と晴樹は黙り込む。
 ターゲットの詳細な情報を手にした嬉しさが空回りして、肝心な事を忘れていたようだ。岩切の先祖は自分達の先祖と共に魔人を封印した程の実力者であったということを。
「そこで、宮木彬良に僕が術をかけて使う。彼女は是非、欲しい戦力だよ。結界破りが得意らしいからね」
 飛燕はペンダントを指先に乗せて遊ばせる。
 今度こそ姉とずっと一緒にいられると思うと、吐き気何かどうでも良くなってきた。
「その為に、まずはさっきの五十嵐優衣って女から得た記憶の情報をもとに、巫女の娘をはじめとする宮木彬良の友達を片っ端から狙って人質にする。いっそ、全員を人質にするっていうのもまた爽快だろうね」
 飛燕は、口元をつり上げた。
「あの剣舞姫・宮木彬良の、困惑した顔という非常にレアなモノが拝めるかもしれないんだから」




後書き
posted by 日渡 蓮香 at 20:25| 第1部−扉の守護者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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